東京郊外に築25年の中古住宅を購入し、リフォームしました。
不動産を学びながら動いた結果、周辺の実勢土地価格より大幅に安く、物件(土地+家)を購入することができ、築25年の住宅に大規模なリフォームを行いました。
忘備録を兼ねて、順を追ってその経緯をまとめます。
この記事の内容
不動産を予習
はじめは予算内で手近な建売住宅(新築)を見るところから始めた家探しでしたが、将来を左右する買い物になるかもしれない不動産で失敗は出来ないと思い、130冊を超える関連書籍を読み漁り、週末はさまざまなジャンルの不動産関連セミナーに参加しました。住宅購入だけでなく、不動産投資関連、家づくり関連、リフォームに関する講座など、学びがありそうと思った場所には足を運びました。
そして不動産を学びながら、希望条件を考えていきました。
家を購入する準備についてはこちらに記事にまとめています。
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【中古住宅を購入】内覧前の準備リスト
希望条件を整える
1年半ほど不動産を勉強しながら、少しずつ「購入希望条件」を固めていきました。
割安に住宅を購入することのメリットの大きさを考え、希望条件を「中古住宅」に絞りました。
立地の選定に最も時間をかけた
最も時間をかけたのは、家を探す「エリア」と「立地」です。
エリアと立地を重視した理由については、こちらの記事に詳細があります。
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【リセールバリューで不動産を選ぶ】資産価値を保ちやすい一戸建てのエリアと立地
- 「主要路線駅から徒歩圏の高台」
- 「同じ条件の複数エリアの中から、比較的地価下落の少ない立地」
という条件の土地を探しました。
上記の条件にたどり着くまでに予習に1年かかり、さらにこの条件に叶う土地を探すのに1か月かかりました。
こうして、過去10年の地価下落がー2%(周囲はー10%、-20%なので比較的緩やか)の郊外駅の高台にある閑静な住宅街を見つけ、そのエリアに売物件が出るのを待っていました。
しばらくして、そのエリアに築25年の家が「古屋付き土地」として売り出されたのを見つけました。
その物件は近所で売り出している条件の少し劣る「建築条件付き」の土地(駅からの距離は同じ、高台ではなく、路線価も検討中の物件より劣る)の価格より35%安く、木下工務店が建てた築25年の家が乗っていました。
内覧
土地として売っている以上、建物は住める状態ではないのかもしれないと思いながらも、内覧することにしました。
内覧を終えて、私たち家族は90年代に建てられたその家がこれまで見た中で最も希望条件に合うものだと直感しました。
内覧の際に聞くことについては、こちらに記事があります
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中古住宅の物件【内覧・内見で聞くことと注意点】
中古住宅の建物査定額
建物の価値は新築を100%とすると、人が住み「中古」になった瞬間に–15~20%、住んで10年で–50%、築22年で限りなくゼロに近いとされます。
その物件は築25年の建物なので建物の価格はおそらくゼロと査定されたのだと思います。
屋根と外壁、内装、水まわりなどは、ソフトの部分さえ新しくすれば、綺麗な家になることは目に見えています。
家の内装は、築25年なりに使い込まれた印象でした。
そしてたったそれだけの理由で、新築であれば800万ー1200万円程度の家の価格が「0円」と査定されているなら、格安だと感じました。
しかしなぜそんなに安いのか、なにか(事故など)あるのではないか?不安になりました。
また、建物の安全性はプロの住宅診断士に判断を任せなければ安心できないので、インスペクションは必要だと思いました。
物件について調べる
周囲の土地(住宅用の更地)より35%も安く土地と住宅が手に入るなら、大規模なリフォームという初期費用をかけてもかなり割安と判断できます。でも、安心して喜ぶにはあまりにも安過ぎでした。
物件の状況を内覧以外の方法で調べる手順については、こちらに記事にしています。
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中古住宅の内覧以外でチェックするべき【物件の注意点】
法務局に行って「登記簿謄本」を調べ、仲介会社に売主の事情を聞いてもらう
売主は遠方の不動産会社だと分かりました。
また売主から、この物件の前の住人が家を売った事情を聞き(個人的な事情なので詳述しませんが)事故物件ではないことがはっきりして、価格への不安は薄くなりました。
この家を最後に相続した前住人の遠縁の人が、家の価格にこだわることなく自分の近所の不動産会社に売り、不動産会社(売主)は遠方にあるため、この物件を実際に見ていない・このエリアを現場として把握していないため、安過ぎる価格が付けられたのではないかと感じました。
(後日、契約の際はじめて売主さんに会ったところ「この辺の相場が全く分からず、あの価格で土地として売ったらリフォーム再販業社からたくさん問い合わせが来た」とおっしゃっていたので、ミスプライスという推測は当たっていたと思います。)
価格への不安は減ったものの、不安はまだありました。
肝心の「家」の安全性、耐用年数と、住宅ローン控除を受けられるか否かです。
格安な物件の不安
家の安全性
築25年の家に、仮にあと35年住むとして築60年です。水害のリスクは少ない高台の台地ですが、首都直下地震に最低1回見舞われると仮定します。建物は大丈夫でしょうか?
家の安全性についてはプロの判断を仰ぐのが正解なので、申し込み時にホームインスペクションするまで判断は保留になります。
住宅ローン控除は適用されるか
住宅ローン控除の適用は築20年までです。
築20年超の住宅がローン控除の適用になるにはいくつか条件がありますが、この建物には条件を満たすことができる書類等は何も残されていませんでした。
住宅ローン減税が適用されるには、下記のいずれかが条件です
- 築20年以内に建てられた住宅
- 耐震等級1を取得する
- 耐震基準適合証明書を発行してもらう(発行は建築士?)
- 物件の引き渡しまでに既存住宅売買瑕疵保険に加入する(加入は売主)
これらの可能性について考えました。
×築20年以内に建てられた住宅
(この建物は築25年のため、建物を証明する「検査済証」があってもこの条件は適用にならない。)
×耐震等級1を取得する
(築25年の建物が耐震等級1を取得をするには、多額の耐震補強工事費がかかってくると思い、これは厳しい。)
△耐震基準適合証明書を発行してもらう
△物件の引き渡しまでに既存住宅売買瑕疵保険に加入する(加入は売主)
いずれかの条件は満たしたいと思いました。
申し込みから契約まで
仲介の担当者によると、物件は申し込みから契約まで原則は1週間。
ひとりの顧客が機会を独占しないようにしたいということでした。
今すぐにでも購入申し込みを入れたい。でも、
建物は安全に住めるのか?
リフォームの費用がどれくらいになるのか?
住宅ローン控除の適用は受けられるか?
これらを確認するには、申し込みを入れてからリフォーム見積もり、インスペクションをしていては1週間では間に合いません。
また、週末を挟むと、普段より内覧が入ります。購入申込みをほかから入れられてしまうと万事休すです。
そこで、これらを同時進行で行いました
リフォーム見積もりを取るため、現地調査を入れる
建築士にアポイントを取り、インスペクションの結果、家に大きな瑕疵が無ければその場で購入申し込みを入れる。
インスペクションに来た建築士に、耐震基準適合証明書を発行してもらえるかを聞く。
売主さんに既存住宅売買瑕疵保険に加入してもらえるか交渉する。
リフォーム見積もり
リフォーム内容
「屋根外壁塗装、水まわり全て、壁紙(家中全て)、フローリング(1階部分)、和室→洋室リフォーム(1部屋)、二重窓設置(2か所)」
リフォーム内容が多岐にわたるため、新築住宅も手がける建設会社と、大規模なリノベーションを行う工務店に見積もりに来てもらい、概算金額を出してもらいました。
リフォームの具体的な費用を知るには、リフォーム業者に家に入ってもらい現地調査が必要ですが、購入前の中古住宅は不動産会社に家を開けてもらわなければ入れません。
不動産会社の営業マンと、リフォーム業者のスケジュールをすり合わせて見積もりに来てもらいました。
大規模なリフォームにかかった費用と体験談をまとめた記事はこちらです。
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大規模なリフォームにかかった費用と体験談
インスペクション
申込みの一番手を取りたい気持ちが大きかったので、仲介会社を介して売主さんに許可を取り、週末を挟む前にインスペクションを行うことにしました。
インスペクションの説明が義務化されたばかりで、売主が紹介してくれる業者にお願いすることもできましたが、遠方にいるためと、より早く、自分たちで探した建築士さんにお願いしたかったので、インターネットで探した建築士さんに来てもらいました。
建築士は、家を見るなりこの家がツーバイフォーだと教えてくれました。
屋根裏、床下などを1時間ほど調べた結果「申込みを入れても大丈夫です」と言いました。
この家が数年後に大地震に見舞われたとして、築60年まで住めますか?
と聞くと「メンテナンスをきちんとしていれば大丈夫です」と断言されました。
根拠として
古民家などを別として建売住宅だけに目を向けても、70年代から現代まで、一戸建ての強度や品質は上がってきている。今目にしている「築50年の家」と、これから目にする未来の「築50年の家」は品質が違う。この家はしっかり建てられている。屋根や外壁、シロアリ予防などのメンテナンスをきちんとすれば大丈夫。
それを聞いて、その場で購入申込みを入れました。
また、インスペクションをお願いした建築士さんに「耐震基準適合証明書」を発行してもらえるか聞いてみましたが「できない」とのこと。
建築士の話
「建物が新耐震(1981年以降の建築)と証明する「検査済証」が残っていない建物に「耐震基準適合証明書」を発行することはできない。
独自の検査でそういった書類を発行する人もいるかもしれないが、私の考えでは住宅ローン控除の申請は「公金」にかかわるもの。自分個人の一存で住宅ローン控除の可否に関わる書類を発行することはできない」
この建築士さんの一存で「耐震基準適合証明書」が発行されることはないと分かりましたが、「メンテナンスをすれば住んでも大丈夫」と断言してもらったことで、中古住宅の購入申し込みに踏み切れました。
インスペクションに関する記事
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中古住宅購入時のホームインスペクション(住宅診断・既存住宅状況調査)
「既存住宅売買瑕疵保険」加入を交渉
住宅ローン控除の適用になるには、売主さんに「既存住宅売買瑕疵保険」に加入してもらう以外に選択肢がありませんでした。
そこで、仲介の営業マンに「既存住宅売買瑕疵保険」に加入出来るかどうか、売主さんと交渉してもらいまいした。
売主さん(遠方の不動産会社)
「現状の家の状態で瑕疵保険の加入は厳しい。わりと大きな補修をしてから、瑕疵保険の適合検査をしなければならない」
売主さんは家を補修しない方針。その分を「値引きで応じる」
とのこと。
瑕疵保険が適用されないことで、受けられなくなる住宅ローン控除額を補う「値引き」の提案でした。
私は瑕疵保険加入にこだわりました。
検査で指摘されるような補修箇所であれば、家の安全性を考慮すればいずれ自費で補修することになります。引渡し前にそうした箇所をはっきりさせてきちんと補修し、かかったコストをこちらが支払ったうえでの「既存住宅売買瑕疵保険」は、建物への安心面でも、費用の面でも、大幅な値引きよりも互いにとって都合が良いからです。(こうした中古住宅の流動性を上げるために作られた制度なので、当然といえば当然なのですが)
話はすぐに通りました。補修費用を負担してもらえれば、瑕疵保険に加入するとの連絡がありました。
値引き交渉
瑕疵保険加入と同時に、物件価格の交渉をしました。現状有姿とはいえ、家に大幅なリフォームが必要になることは、価格交渉のうえでささやかな根拠になりました。
値引き交渉についての記事はこちらです。
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中古住宅購入の【値引きの限界と、失敗を避けるコツ】
契約
翌週、売主さんとはじめて会い、家を契約しました。
瑕疵保険に加入する都合上、検査で指摘された「屋根と外壁」のリフォームを行ってから引き渡しという流れになりました。
売主さんは申込時に行ったインスペクション費用をその場で支払ってくれました。
不動産売買契約時に行うことについてまとめた記事はこちらです。
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中古住宅購入時にチェックするべき【重要事項説明書と契約の注意点】
続きを見る
屋根・外壁塗装
瑕疵保険の対象となる「屋根と外壁」を行いました。
外壁塗装の専門業者を探したのですが、大型台風が直撃した直後でどの業者も忙しく、引渡し予定日までに完工は不可能とのこと。
そこで、水まわりと内装工事を依頼したリフォーム会社にお願いしました。
屋根と外壁塗装は3週間ほどで終わりました。
外壁塗装に関する記事はこちら
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外壁塗装にかかった費用と業者選び 優良業社を選ぶコツ
火災保険・地震保険を申し込む
家の保険の加入日は引き渡し日なので、火災保険を比較検討しました。
新築に比べて高額になりましたが、不動産会社からもらった保険会社の見積もりよりも、自分で調べてお願いした保険会社の方が安く、保険料の不払いも比較的少ないとの話だったので、セコムの火災保険に加入しました。
住宅ローン申し込み
ローンはフラット35を利用したいと思っていましたが、不動産会社の提携ローンを使いました。
優遇金利が適用になり金利が変わらないうえに、団信の条件がフラットより良かったからです。
提携ローンというと「自分で行えば済むことに、事務手数料がかかる」というイメージが先行していましたが、リフォームを控えていて「やるべき事」が多い中、不動産会社がローン本審査から事務手続きまでの段取りを整えてくれることはメリットでした。
中古住宅購入・リフォームの際の住宅ローンについての記事はこちらです
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【住宅ローンとリフォームローン】中古住宅を購入しリフォームする際のローン選び
引き渡し
ローンの融資実行と同時に引き渡しを行い、ようやく物件に自由に出入りできるようになりました。
住宅ローンを組んだ際の引き渡しの手順と注意点についてはこちらの記事
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中古住宅を購入して【引き渡し前・引き渡し日】に行うことチェックリスト
引き渡し日に「中古住宅の売買瑕疵保険」の証明も貰えました。
引き渡しと言うと、家の前で鍵を渡される図を想像していたのですが、融資を受けた銀行で鍵をもらい、お世話になった営業マンとはその場で別れました。
その足で家に行き、何も入っていない家をしばらく眺めていました。
水まわりと内装のリフォーム
引き渡しの前の段階で、住宅設備メーカーのショールームでキッチンやユニットバスを選んだり、リフォーム会社と内装の打ち合わせを重ねていました。
自由に出入りできない家のリフォームについての打ち合わせは不自由なことも多く「ここのサイズが分からない」とか「この部分の現状はどんなだったかな?」と、記憶を頼りにリフォーム内容を決めることもありました。
曖昧な記憶をもとにリフォーム内容を判断していたことは、今思えば綱渡りでした。この経験から、中古をリフォームすることを専門とする会社から住宅を購入すればよかったとも思っています。
引き渡しを終えて1週間後には、内装リフォームが始まりました。
リフォーム中はときどき家を見に行きました。
失敗したのは、自治体のリフォーム補助金申請が契約後になってしまったことです。
原則契約前に申請だったのですが、うっかりしていました。
なんとか申請は通りました。
リフォーム補助金(自治体)だけでなく、次世代住宅ポイントの申請も期限ぎりぎりになってしまいました。
こうした補助金やポイントは、貰えると思って安心していると締切がタイトな事があるので注意が必要だと分かりました。
水まわり、内装リフォームは1か月ほどで終わり、生活できる状態になりました。
水まわりのリフォームに関して、設備ごとに記事をまとめています。
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キッチン・バス・トイレ 水まわりリフォームの手順と費用
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【システムキッチンをリフォーム】かかった費用とメーカー4社の特色
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ユニットバスのリフォーム費用と節約 注意点は【窓と壁】
中古住宅購入・リフォームで学んだこと
10年ほど前に、家を購入するか迷ってやめた経験があり、
一時期は「ローンを組むくらいなら、一生賃貸のほうが自由でいい」と思っていましたが、長年の賃貸暮らしのなかで、ベースとなる大切な場所があるほうが心の安定につながると分かってきたために住宅購入を考えはじめました。
自分たちにとって「いい住まい」とはなにか、不動産を学びながら徹底的に考えました。
いままで曖昧だった「いい家」の条件
そして将来の可能性を広げるには、どんな価値観で家を選ぶのがよいか
こういったことを洗い出すことが出来たことが、住宅購入のひとつの成果だと思っています。
中古住宅購入・リフォーム関連の記事をこちらにまとめています。
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中古住宅を購入してリフォームするまでの流れ